2021年10月から電子書籍出版サービスのkindle direct publishing(以下、KDP)で紙の本が日本でも出版出来るようになりました。
 まだあまり活用されている人も多くないかもしれませんが、この新しいサービスはWEB経由でデジタル入稿するだけで2022年12月現在、世界12か国のアマゾンで紙の本が即販売されるという画期的なサービスになっています。アマゾンは世界最大の本屋さんでもあります。その世界最大の本屋さんにあなたの本が並びます。
 自費出版とは違い、ダイレクト出版なので在庫を持つ必要もありません。極端な話、出版そのものに関する費用はゼロで出版が可能です。凄い時代になりました。

 必要なのは、パソコン(Microsoft wordさえあれば大丈夫)とコンテンツと少しの情熱だけ。

 私もお蔭様で今月2冊目のZINEを出版致しました。(是非、宜しければお手に取って頂けると幸甚です https://haunts-cp.com/2022/12/23/shop-2nd-photo-book/)。今回も全ての作業を一人で行いました。

 出版した後、そのZINEを売るためには・・・、また別の努力が必要になってくるのですが、まず紙の本を出版するハードルがこれだけ下がっている事はもっと知られても良いんじゃないかと思っています。何よりも、このサービスが知られる事なく無くなってしまう事の方が私にとってはデメリットなので、是非皆さんと一緒に自主出版を行えればと思っています。


 KDPのアカウント取得の方法は、別のサイトにお任せするとして・・・(こちら、丁寧に解説されています。https://publish-e-books.com/kindle-direct-publishing-setting/)、この記事では、私が2冊目のフォトブックを出版するまでにした作業を順を追って説明していきます。大まかな流れとしては・・・、

①コンテンツの準備(私の場合は写真と少しの文章)
②wordにて本文入稿データの元ファイルを作成
③wordにて表紙入稿データの元ファイルを作成
④両ファイルをwordにてpdf化
⑤KDPに主要情報を入力、WEB上で校正確認
⑥校正刷りを取り寄せて現物にてチェック
⑦校正刷りを確認した上での微修正及びデータ更新、再入稿
⑧審査を経て出版へ

となります。では、順を追って説明します。


①コンテンツの準備

 私は写真作家です。自分が撮影した写真作品をスマホやPCの画面経由ではなく、紙に印刷された状態で見て頂きたい、という思いでZINEを作成していますから、写真がメインのコンテンツになります。KDPでは写真の解像度は「300DPI以上」となっています。写真がメインコンテンツではない場合でも、挿入する写真はそれぐらいの高解像度の写真が求められます。ご準備される写真の解像度にはご注意下さい。

 文章に関しては、後ほどwordに転記する事を考えて、作成しやすいソフトを使ってご準備下さい。文章メインの場合は、予めKDP指定のwordファイルを使用して判型を設定した上で、書き始めるのも良いかもしれません。私の場合は、文章は少ないのでメモ帳アプリで書き起こしました。

②wordにて本文入稿データの元ファイルを作成

 KDPでは仕上がりの判型(書籍の形)ごとにwordのテンプレートファイルが準備されています。

テンプレートダウンロードのページは →こちら

 私は1冊目も2冊目も正方形に近い形の大きなサイズ21.0×25.7cmで作成しました。写真がメインなので縦長の判型は合わないと判断したからです。コンテンツに依って適切な判型も違うでしょうから、仕上がりの判型をイメージして適切なものを選択して下さい。

 次に「裁ち落とし」と「マージンの設定」です。裁ち落としも詳しくKDPのページで説明されていますが(→こちら)、要はページのギリギリまで写真やイラストを印刷するかどうか、の設定になります(マージンの外は文字通り裁ち落とされます)。
 また内側(のど側)のマージンは総ページ数に依って異なりますので、総文字数を元にある程度、仕上がりのページ数を想定しながらマージンを設定下さい。

③wordにて表紙入稿データの元ファイルを作成

 簡単な画像作成程度であれば、実はwordでも作る事は可能です。勿論、adobe illustratorのような専用描画ソフトに比べたら機能は比べるべくもありませんが、凝ったデザインが必要なければ意外とwordでも作る事は出来ます。私も2冊とも表紙のデザインはwordで作成しました。

 KDPではページ数に依ってサイズが変わる表紙サイズの計算ツールとテンプレートのダウンロード機能が提供されています(→こちら)。

↑必要事項を選択して「サイズの計算」ボタンを押すと・・・
↑サイズが自動で計算される

 この後、「テンプレートをダウンロード」ボタンを押すと、テンプレート画像のpngファイルがダウンロードされますので、上記計算のサイズをwordにて「レイアウト→サイズ→その他の用紙サイズ」で任意のサイズに設定し、下地としてテンプレートを貼り付けて、図形や写真、テキストボックスを貼り付けていく作業になります。

↑あえてテンプレートを見せていますが、最終的には全て隠します。

 wordでの描画は少し慣れが必要かもしれませんが、簡単なものであれば余計な知識も必要なく使えるので意外と便利です。個人的にいくつか気にしているwordのクセをお書きしますと、

・オブジェクトの「文字列の折り返し」設定は「前面」をデフォルトにするとレイアウトしやすい
・レイヤーの設定はないが、全てのオブジェクトは挿入した順に上へ上へと層が重なるように存在している
・この後のpdf化で描画が乱れるので「画像の透明化」処理は使わない


ぐらいでしょうか。まずは色々試される事をおすすめします。多少の間違った操作をしてもwordが壊れる事はありませんので。

④両ファイルをwordにてpdf化

 KDPへの入稿はpdfファイルにて行います。作成した本文及び表紙のwordファイルをpdf化します。この時の注意点として、プリント経由のpdf印刷はレイアウトが乱れるので行わないでください。「ファイル→エクスポート→PDF/XPSの作成」からwordをpdf化すると、作成していたwordファイルのレイアウトのままpdf化されるようです。

↑こちらからpdf化しないとレイアウトに乱れが・・・

⑤KDPに主要情報を入力、WEB上で校正確認

 pdfで本文と表紙のファイルが準備出来たら、あとはもう入稿するだけです。あと少し!

↑一番右の+ボタンから入稿ページへ


 まずは、詳細情報の設定。必須項目は、言語、本のタイトル、著者、内容紹介、出版に関して必要な権利、キーワード、カテゴリー、成人向けコンテンツ、の8つ。画面のガイダンスに従って入力下さい。言語や本のタイトル、著者等は、出版後に編集は出来ません。

 次にコンテンツの編集へ。まずISBNコードを無料で自動採番し、出版日の入力、印刷のオプションにて、インクや用紙のタイプ、判型、裁ち落とし、表紙の仕上げ、読む方向等を入力します。この基本情報と入稿データで、ブラウザ上にプレビューアーが立ち上って校正作業になりますので、間違いなく入力してください。
 ちなみに私、いつも「読む方向」設定が分からなくなります。表紙を上にして置いた時、左側に綴じ代が来るのが「左から右」の設定です。

↑参考まで、私の新刊の設定です

 そして、いよいよアップロードです。本文と表紙をアップロードし、アップロードが成功したらプレビューアーを起動。

 プレビューアーが起動するまでには少し時間がかかります。プレビューアーは単に内容が画面確認出来るだけのツールではなく、印刷範囲外に画像が配置されていたりするとアラートも出るようになっています。
 アラートがあれば、またwordファイルに戻って修正をし再度pdf化→アップロード。勿論アラートが無くとも、レイアウトや文字サイズ、フォント等がイメージと違ったら修正とアップロードを行う感じです。

↑だいぶ本のイメージが見えてきました

 納得いくデータになりましたら、右下の承認ボタンを押すとこの本の印刷コストが確定します。そして最後、価格の設定へ。

 希望価格はある一定の幅の中で自由に設定することが出来ます。詳しくは書きませんが、印刷コスト、アマゾンのロイヤリティ、著者の利益のバランスを見て価格を設定下さい。

⑥校正刷りを取り寄せて現物にてチェック

 価格が決まれば、出版に向けた審査に向かう事も出来るのですが、個人的には校正刷りを取り寄せて、ほぼ現物の状態でイメージ通りに印刷されるのかチェックする事をおすすめします。私の経験では、画面で見ている状態と紙の校正刷りを確認した場合ではやはりイメージが違う部分がいくつか出てきましたので、この作業は大事だと思っています。

↑ペーパーバックを出版、を押さず、校正刷り(有償)を依頼→下書き保存

⑦校正刷りを確認した上での微修正及びデータ更新、再入稿

 校正刷りは依頼から3~4日で届きます。写真のように再販禁止とわざわざ上から印刷されて校正刷りだと分かるようになっています。

 今回は最終的に校正刷りを確認して、表紙レイアウトの微修正と、フォントサイズの見直し、フォントの変更等も一部行いました。やはり校正刷りの確認は大事だと感じました。
 修正作業としては、また本文及び表紙のwordファイルの内容修正を行いpdf化、そして⑤の作業と同様にプレビューアーでチェック→承認の流れとなります。

⑧審査を経て出版へ

 ここまでくれば、あとは価格設定画面の右下「ペーパーバックを出版」のボタンを押して、最終のアマゾンの審査が通れば、晴れて出版の運びとなります。
 が、私、今回ここで審査に一度落ちました。撮影データの記載ページを、読ませるページでもないことからフォントサイズ4ポイントで作成していたところ、判読できないテキスト、とメールが届きました。基本の最小フォントサイズは7ポイントのようです。皆さんお気をつけ下さい。


 さて、いかがでしたでしょうか。少し駆け足で記載しましたが、ここまでの作業はパソコンさえあれば、ひとりで自宅ででも行う事が出来ます。プロの編集者の目を経る訳ではありませんので、緩い内容で作る事も出来ますし、レイアウトやデザインも自分で自由にする事が出来ます。その分誤字等のチェックも全て自分にかかってきますが、出来上がった時の充実感もひとしおです。このページの内容が、これからペーパーバックを作ろうと思っている皆さんの参考になれば幸いです。

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